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column

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suzumoku

http://www.worldapart.co.jp/suzumoku/

name : suzumoku
birth : 1984.7.11
born place : Shizuoka

中学2年でギターを持ち、同時に作詞・作曲を始め、地元静岡のストリートで歌い始める。 様々なジャンルの音楽を聴き漁り、音楽性を模索。高校卒業後、楽 器製作の専門学校に入学し、ギターやベースの製作に明け暮れる。音楽は完全に趣味にしようと決め、岐阜にある国産手工ギター工場に就職し、音楽活動を一旦 休止するものの再開。ギター職人の道とミュージシャンの道、どちらが本当に進むべき道なのか真剣に考え、06 年夏、プロミュージシャンになることを決意。
2007年1月に上京し,10月にアルバム「コンセント」でデビュー。
2013年3月にリリースした自身初のフルアルバム「キュビスム」は、醜さ、くだらなさ、救い、ベクトルの異なる曲が全て詰め込まれ、音楽と文筆における感性、一貫したメッセージ性には定評があるsuzumokuのまさにベストな1枚。
2度に渡って全国47都道府県生声弾語りツアーを完遂させ、集大成として、2013年7月に自身による撮り下ろし写真集付きの全曲入りツアーライブ音源 「たどり着いた景色はどうだい?」、同年9月にクラシックギター弾き語りアルバム「Rusty Nylon」をリリース。12月には配信限定の両A面シングル「グライダー/零ドライブ」をリリースするなど精力的に活動を行っている。

高校生の頃、地元の駅周辺の地下道でストリートライブをよくやっていた。
ギターを背負って地下道へ続く階段を降りる時、毎回無意識のうちに耳を澄ましていたのだが、

「…あ、今日も誰か歌ってる。」

雑踏の中から僅かに聞こえてくるギターの音、タンバリンの音、歌声、それを鼓膜がキャッチすると、
なんとも言えない静かな興奮が湧き上がって来たのを、今でもよく覚えている。

そして時は流れて現在、僕にとってこの感覚に最も近いのが、アートリオンに行く時の感覚だ。
西荻窪駅から歩くこと数分、飲み屋街を抜け、
アートリオンのある雑居ビルの地下階へ続く階段を降りる時、少しだけ見える店内を横目に、
あの時と同じ様に耳を澄ます自分がいる。

ストリートライブもそうだったが、この感覚は言ってみれば、
歌をうたいに行く、ライブを観に行く、酒を飲みに行く、などという基本的な目的とは別に、
“誰かに会いに行く、誰かに出会いたい”という感情や欲求が必ずある。
これは初めからあったわけではない。
特に僕なんかは出会いに対してなかなか積極的になれず壁を作ってしまいがちなのだが、
何かのきっかけで“そこ”に足を踏み入れた時、
その壁を、決して壊さずに、スッと乗り越えて来てくれる輩がいて、
最初はぎこちないけれど徐々に打ち解けて、気が付いたら一緒に笑っていて、
そこで初めて“また会いたいな”という感覚が芽生えてくる。
やがて壁には鍵の無いドアがいくつも出来ていたり。
壁を崩すのは、月日に任せればいい、と。

アートリオンにはそんな出会いの空気や種を持ったスタッフ達が勢揃いだ。
見た目通り大きく広く深い海の様な包容力を持った“だいじゅ”、
少し荒っぽいが台風の様に人と人を繋げて巻き込む“代々木原シゲル”、
まるで日曜日の原っぱの様な天然感で接してくれる“矢野織江” 、
一見クールな猫の様でありながら常にユーモア満載の“倉沢桃子”、
そんな人間性を持った彼らは、音楽という共通点でしっかり結ばれている。
そして、店内に描かれ飾られた“稲葉邦彦”の絵はまさに、
そんなアートリオンを見事に表現していると思う。
おかげで僕はすっかり常連、十中八九終電を逃してしまう(笑)

アートリオンの楽しみ方は、ライブを観るだけではなく、美味い料理と酒を嗜むだけではない。
自分自身がアートリオンそのものを、奏で、掻き鳴らし、描き、描き殴り、
それぞれの生活や人生にとっての“楽器や絵筆”にしていく事だ。
お気に入りの楽器は、お気に入りの絵は、弾けば弾く程、観れば観る程、
深みが増し、思い入れが増し、自然と仲間を引き寄せてくれるもの。
今日初めてアートリオンへ行く君は、明日もアートリオンに行こうと思っている君は、
どんな音を、どんな色を、どんな出会いを見つけるだろうか、繋いでいくだろうか。
そこに僕も立ち会えたら、きっと素敵だ。

アートリオン、一周年おめでとう!
また来週あたり飲み行くわ!(笑)

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